【バンコク|Go Cafe】路地裏で3代続く、小さな炭火コーヒースタンド

開店前、道具を準備する店主 アジア

路地裏から漂う、炭火コーヒーの薫り。

チェンマイからバンコクへ、一晩かけて夜行列車で移動した。宿に荷物を置く前に、まずコーヒーが欲しくなった。バンコクのホステルの人に聞いた、Go Cafe(กาแฟอาโก)へ向かう。表通りからは店の存在にすら気づかないくらい奥まった立地だが、実際に足を運んでみると、炭火でコーヒーを淹れ続けて3代目という、想像以上に骨太な店だった。今回はその様子をレポートする。

店構え|路地の奥へ吸い込まれる入口

路地の入口。ここから先に店があるとは、地図がなければ気づけない
路地の入口。兼、お店。

表通りから一本入った路地は薄暗く、両側の壁には貼り紙やポスターが積み重なるように貼られている。奥までは10メートルもないくらいだが、日差しが遮られているせいか実際の距離より長く感じた。人通りも少なく、最初はここにコーヒースタンドがあるのか半信半疑のまま歩を進めた。

さらに奥へ続く路地。壁のカレンダーが2026年5月を指していた
さらに奥へ続く路地。ここは、所謂厨房にあたる。

路地はさらに奥へと続いていて、突き当たりには古い建物の窓や配管がそのまま剥き出しになっている。作られた雰囲気ではなく、生活の延長線上にコーヒースタンドがある感じで、観光地化された道とは明らかに空気が違った。

店内の雰囲気|時が止まったような雑貨とレトロ

壁一面に貼り重ねられた新聞や古い広告
壁一面に貼り重ねられた新聞や古い広告

店の壁は、古い新聞の切り抜きやコカコーラの広告、王室関連の写真などがびっしりと貼り重ねられていた。何年分の記憶が積もっているのか見当もつかないが、一枚一枚を読み込んでいくだけで時間が溶けていきそうな密度だった。

壁に掲げられた「BREEDERS」の看板文字
壁に掲げられた「BREEDERS」の看板文字

壁の一角には赤い文字で「BREEDERS」と書かれた古い看板がそのまま残されている。由来は分からなかったが、色褪せながらも存在感を放つ文字は、この場所が積み重ねてきた年月をそのまま物語っているように見えた。

貼り紙の中に紛れ込んだカラフルな装飾画
貼り紙の中に紛れ込んだカラフルな装飾画

古びた新聞の隣に、色鮮やかな装飾画が貼られていたのも印象的だった。統一感を狙ったわけではなく、時代ごとに貼り足されてきたものがそのまま共存している感じが、この店らしいごちゃ混ぜ感を作っている。

年季の入った木製の棚とカウンター
年季の入った木製の棚とカウンター

カウンターの棚には、インスタントコーヒーの空き缶や古時計、ラジオなどが無造作に並んでいた。飾り付けというより、長年使い込んできた道具がそのまま棚に残っているという方が近い。QRコード決済の案内も貼られていて、レトロな空気の中にもちゃんと現代の便利さが同居している。

ネスカフェやミロの缶が並ぶ棚の全景
ネスカフェやミロの缶が並ぶ棚の全景

棚の全景を見ると、ネスカフェやミロ、コンデンスミルクの缶がぎっしりと並んでいる。既製品のインスタントコーヒーではなく、あくまで自家製の炭火コーヒーが主役だが、こうした缶詰めの道具立てが店の歴史の長さを感じさせてくれる。

ブラウン管テレビでサッカー中継が流れる
ブラウン管テレビでサッカー中継が流れる

奥にはPHILIPSの古いブラウン管テレビが置かれていて、リアルタイムなのか、昔のかは定かではないが、サッカーの試合が流れていた。薄暗い店内でテレビの光だけがぼんやり浮かび上がる様子は、昭和の喫茶店を思い出させる懐かしさがあった。

メニュー|25バーツから

ラミネート加工された手作りの写真メニュー。店名「Go Cafe」の手書き文字も確認できる
手作りの写真メニュー。

メニューは既製のボードではなく、ドリンクの写真を切り貼りしてラミネート加工した手作りのものだった。「Ice Plum」「Coffee Ice」「Thai milk tea」と英語の手書き文字が添えられていて、Coffee IceとThai milk teaはどちらも25バーツ。

もう一枚の写真メニュー。Lemon teaやBlack teaの品揃えも
裏のメニュー。Lemon teaやBlack teaの品揃えも

裏のページにはLemon teaやBlack tea、Ice black coffeeといったラインナップも載っている。派手さはないが、必要なメニューがひと通り揃っていて、道端のコーヒースタンドとして十分すぎる品揃えだ。

額に入れられた、創業当時のものと思われる古いメニュー表
額に入れられた、創業当時のものと思われる古いメニュー表

店の隅には、額に入った年季の入ったメニュー表も飾られていた。タイ語で書かれた価格は2.50〜5.00バーツと、今とは比べ物にならないほど安い。現行のメニューではなく、創業当時の名残として飾られているものだが、これだけでも店の歴史の長さが伝わってくる。

注文|タイミルクティーと、アイスコーヒー

氷の入ったグラスへ、オレンジ色のタイミルクティーが注がれる
氷の入ったグラスへ、オレンジ色のタイミルクティーが注がれる

まず頼んだのはThai milk tea。氷を詰めたグラスに、鮮やかなオレンジ色の液体が勢いよく注がれていく。見ているだけで喉が鳴った。

完成したThai milk tea。25バーツとは思えない満足感
完成したThai milk tea。25バーツとは思えない満足感

できあがったタイミルクティーは、甘さの奥にしっかりとした茶葉の渋みが効いている。甘ったるいだけの安いミルクティーとは違い、後味がすっと引いていくタイプで、暑い中で一気に飲み干したくなる美味しさだった。25バーツ、日本円にして約100円ほどでこの満足感は破格だと思う。

道端のコーヒースタンドで、ゆったりした時間が過ぎていく。

注文したコーヒーを自分でかき混ぜる
注文したコーヒーをかき混ぜる

このまま帰るのも後ろ髪を引っ張られる思いになり、続けてCoffee Iceも注文した。グラスの中で、コーヒーと氷、下に沈んだミルクの層を丁寧にかき混ぜる。

できあがったCoffee Iceをテーブルで一枚
できあがったCoffee Iceをテーブルで一枚

苦味は強すぎず、炭火で淹れているぶん香ばしさがしっかり立っている。氷で薄まっても最後まで味がぼやけないのは、しっかり濃く抽出しているからだろう。

飲み終わりに近づいたCoffee Iceのグラス
Coffee Ice

どちらも25バーツという値段設定に驚くが、値段以上に「ちゃんと美味しい」ドリンクだった。観光客向けに作られたカフェメニューとは違う、地元の人が毎日飲んでいる味なのだと思う。

炭火抽出のパフォーマンス|開店前の仕込みから

開店前、道具を準備する店主
開店前、道具を準備する店主

実はこの日、店に着いたのは開店時間より少し早かった。まだ準備中の店先で、店主が黙々と道具を並べているところに出くわしてしまったのだが、せっかくなのでそのまま少し離れた場所で待たせてもらうことにした。結果的に、これが一番のこのお店の楽しみ方だったと思う。

うちわで炭火を扇ぐ手元
うちわで炭火を扇ぐ

まず火をおこすところから始まる。うちわで炭を扇ぐ手元だけでも、職人の手捌きだというのがよく分かった。

しゃがみ込んで何度も何度も扇ぎ続け、白い煙がもうもうと立ち上る。マスク越しでも表情が真剣なのが伝わってきて、こちらまで自然と見入ってしまった。

火加減を確かめながら炭を調整する店主
火加減を確かめながら炭を調整する店主

炭の様子を見ながら位置を調整し、火の勢いを整えていく。この工程だけで数分はかかっていたと思う。正直、コーヒー1杯にここまで手間をかけているとは想像していなかった。

炭火の炎のクローズアップ
炭火の炎

お湯が沸くのを待つ間も、店主はうちわを片手に火の番を続けていた。急かす様子はまったくなく、この時間そのものが仕込みの一部なのだと感じさせる落ち着きがあった。

お湯を沸かし、抽出の準備をする店主
お湯を沸かし、抽出の準備をする店主

沸いたお湯を使って、いよいよ抽出が始まる。ここからの手際は、見ていて飽きなかった。

靴下フィルター(タイ式コーヒーフィルター)にお湯を注ぐ
靴下フィルター(タイ式コーヒーフィルター)にお湯を注ぐ

タイの屋台コーヒーでおなじみの、布製の靴下フィルターにお湯を注いでいく。粉とお湯が馴染む香りがふわっと辺りに広がった。

漉したコーヒーをピッチャーへ移す
漉したコーヒーをピッチャーへ移す

フィルターで漉したコーヒーを、金属のピッチャーへ移し替える。同じ動作を何度か繰り返しながら、濃度を調整しているようだった。

熱々のコーヒーをグラスへ注ぐ
熱々のコーヒーをグラスへ注ぐ

最後に熱々のコーヒーをグラスへ注ぎ入れる。湯気が立ちのぼる様子まで含めて、一連の流れに無駄がなかった。

オープン前の30分弱、この火おこしから抽出までの一部始終を近くで見させてもらったのだが、まるでパフォーマンスを見ているような感覚だった。手際の良さはもちろん、火加減や注ぐ角度、一つひとつの所作に無駄がなく、長年やってきた人にしか出せない滑らかさがあった。コーヒーが出てくるまでの待ち時間すら、この店では見どころのひとつだと思う。

3代目が受け継ぐ「Go」の店

路地の奥のテーブル席。地元の常連客も静かに過ごす
路地の奥のテーブル席。地元の常連客も静かに過ごす

帰り際に少し店主のことを聞いてみると、この店は3代目だという。名前は「ゴーさん」で、店名の「Go Cafe」もこの店主の名前に由来しているとのことだった。代を重ねてここまで続いてきたというだけで、路地裏の小さなスタンドに対する見方が少し変わった。

まとめ|路地の奥でしか出会えない一杯

夜行列車の疲れた体で偶然たどり着いた店だったが、結果的にこの旅で印象に残るコーヒー体験のひとつになった。炭火で淹れるという工程そのものに手間と時間がかかっているぶん、出てくる一杯には作り手の手仕事がそのまま乗っている。派手な内装でも、SNS映えを狙った店でもないが、こういう店にこそ足を運ぶ価値があると思う。ここでの一杯だけでも、旅の目的にもなると思う。

バンコクの中華街エリアを歩く機会があれば、少し寄り道してみてほしい。路地の奥で、3代続く炭火コーヒーが待っている。

料金・評価

項目評価
価格★★★★★
ロケーション★★★☆☆
テイスト★★★★☆
清潔さ★★★☆☆
リピート度★★★★★

SHOP INFO

項目詳細
店名Go Cafe(กาแฟอาโก)
エリアバンコク・中華街エリア
住所不明(地図を参照)
電話番号不明
営業時間8:00〜17:00(Googleマップ記載)
定休日不明
価格帯25THB前後(約100円)
おすすめThai milk tea/Coffee Ice(各25THB)

📍地図